持久力(エンデユランス)を高めるには
持久力と言うとマラソンを頭に浮かぶ人がほとんどだと思います。低強度で長時間運動を続けることは全身性持久力と呼ばれ、高強度で長時間ペースダウンすることなく続けられる能力をスピード持久力と言います。
100m走のように10秒間の競技にもパワーを出し続けるには持久力は必要です。また、ウエイトリフティングのように瞬間的な力を発揮する競技も、試技が数回必要になれば持久力は必要になります。
多くのスポーツはサッカーやバスケでみられるように動いて、休んでを繰り返しずっと動いているわけではありません。その能力を高めるためにインターバルトレーニング(IT)が用いられています。しかし、レペティショントレーニング(RT)が完全休息を間に挟むのに対して心拍数が完全に下がらないままに運動を開始するITは強度が低い状態で行われ、逆に目的が達せられない恐れがあります。
以前は、短距離選手やパワー系の競技には最大酸素摂取量は重要ではないとされていましたが、今ではどの競技にも最大酸素摂取量が大きいことが重要だと言われています。
全身持久力を鍛えるには長い距離を走るロングスローディスタンス(LSD)が一般的で、特に有効なのが小学生や中学生であり、この時期に全身持久力を強化することはその後の競技生活に大きく影響します。逆にこの時期に、瞬発力を鍛える練習に偏るとせっかくのチャンスを失うことになります。
小学生・中学生ではLSDによる全身持久力を高め、高校生以降には筋持久力やスピード持久力を高めるトレーニングを行い、年代に応じて伸びる能力を高めることを認識し、トレーニングを行わなければなりません。大学・社会人になっても走り込みで持久力を高めるには効果的とは言えません。
最大酸素摂取量は1、筋肉自体が変わること2、酸素を身体中に送る能力3、入口(肺)の能力が相まって大きくなります。簡単に言えば、筋量が大きければミトコンドリアが多くなるわけですから酸素が多く取り込めます。
持久力を評価するには最大酸素摂取量を測定すればいいわけですから、トレッドミルや自転車エルゴメーターを使用し、段階的に負荷を上げて呼吸量や酸素、二酸化炭素の量を測定します。それには大学等の研究機関に足を運び、測定しなければなりません。
しかし、スポーツの現場レベルでは、20mシャトルランでおおむね最大酸素摂取量の改善がわかりますので、有用性が高いと考えられています。
運動のエネルギーはATP-CP系(無酸素)、解糖系(無酸素)、酸化系(有酸素)に分けられるが、ATP-CP系は容量が少ないので、解糖系と酸化系がエネルギーの中心になります。
運動強度が高くなれば解糖系のエネルギーが必要になり、低ければ酸化系のエネルギーが多くなります。持久系の運動は運動強度が低く、長時間続けるものなので酸化系のエネルギーの供給が必要です。酸化系から解糖系のエネルギーに変わる境目をLT値と言って、乳酸がよく出始めるところと言われています。
乳酸は筋肉内に貯まると酸性に傾くため、疲労すると考えられてきましたが、乳酸は酸化系のエネルギー産生に利用されるために、必要な物質であり必ずしも悪役にはなりません。つまり、解糖系のエネルギーが枯渇した時に、乳酸を利用した酸化系のエネルギーの産生が促されるのです。
LT値以上の高い運動強度では解糖系のエネルギーが主に利用されますが、筋肉内の糖(グリコーゲン)の利用には限界がありますので、酸化系のエネルギーの利用も必要です。つまり、LT値を上げることによって、酸化系のエネルギー利用を行いやすくすることが、長時間の高い運動強度を維持できるのです。LT値を上げるトレーニングを行うことでミトコンドリアの量、クレアチニン(ATP-CP)の量が増え、糖の温存ができ適切な乳酸の利用で持久力が上るという仕組みです。
トレーニングは3段階で行います。初めにLT値以下では最大心拍数の65%~75%でジョギング程度。次はLT値を少し上回った運動強度で、例えばトレッドミルで3分間走って3分間休むを5セット。最後に25mを3往復走って、1分休むを6セット。ここでは、最後に動けなくなるまで体力を使い切るようにします。
トレーニングのインターバルでは、体力は100%まで回復はしません。糖は55%まで回復するのに5時間、100%戻すのに24時間かかります。しかし、ATP-CPは30秒で50%回復しますので数十秒後にはまた走れるようになります。筋肉内のミオグロビンは2分間程度で筋肉に酸素を供給できますのでインターバルは2分間で良いと考えます。
また、競技種目でその特性がありますので、トレーニングメニューは変化をつけなければなりません。
参考資料 コーチング・クリニック2017年3月号 桜井智野風 牧野講平