筋肉痛には早発性筋痛と遅発性筋痛があります。前者は運動中、運動直後に起こるもので筋・筋膜断裂が原因とされます。後者は乳酸やその他の代謝物質が筋肉内の侵害受容器を刺激して起こるものです。
名古屋大学の研究では、筋肉の疲労で筋繊維の膜の透過性に異変が起き、クレアチニンキナーゼ、ATP、アデノシンが筋繊維から放出され、血管の中に入っていく。血管内皮細胞からブラジキニンが分泌されて、その後の種々の連鎖反応で侵害受容器を刺激して痛みを起こす。これは、筋肉の破壊から筋肉痛が起こるものではなく、神経が過敏になって、筋肉痛用の痛みが生じるというものです。
1984年に発表された学説では、筋肉内のブラジキニンが筋肉の炎症で発生し、筋肉痛が出現するというものでしたが、覆されたのです。
つまり、MRI検査で筋組織の破壊が無く、短期間に炎症が取れてしまえば、早期に運動への復帰が可能と言うことです。
遅発性筋痛には2種類の状態があります。1つは筋繊維へのダメージが少なく、筋肉内の感覚器が敏感になっているだけの場合、2つは筋繊維に小さな損傷がある場合で、これは前者と比べると格段に治療期間が長引きます。前者の場合の対処方法には、安静を保つことよりも、運動を継続して神経の感受性を低くしてしまうことが有効なことも考えるべきでしょう。その際には運動量を上げすぎないことに注意が必要です。服薬としては、過敏な神経をブロックする薬の使用が効果的でしょう。
運動の種類では、エキセントリック収縮(伸張性収縮)で筋肉痛が起こりやすいので、筋トレではこの作用を利用して、バーベルを持ち上げるときに補助をしてもらい、下ろす時には補助を外すというトレーニング方法が推奨されています。
参考資料: コーチングクリニック 2018年 5月号 石井 直方