短距離走では硬い筋肉が有利となる
一般的に筋肉の質を判断するために皮膚上から筋肉を押して柔らかい柔軟な筋肉だと言って評価する傾向があります。しかし、これでは筋肉の走行に垂直に押して判断しており、筋肉の硬さやコンディションしかわかりません。
そこで、超音波剪断波エラストグラフィ用いて、科学的に筋肉の質を追求しました。短距離選手22人と長距離選手22人を対象にして、大腿四頭筋外側広筋を調査しました。結果は短距離選手では伸び縮み少ない選手、長距離選手では伸び縮みの多い選手のタイムが良く、パフォーマンスの高さが証明できました。
筋肉の硬さに影響する先天的要素と後天的要素
この結果から、筋肉が硬いほうが短時間に筋力を発揮できると推測されます。
つまり、筋腹が太く、硬いほうが短距離に向いており、長距離選手では筋肉が硬いとパワーやスピードのロスが多くなり、柔軟性があるほうがスムースな動きが得られると考えられます。
筋肉はストレッチで柔らかくなり、ウエイトトレーニングで硬くなると報告されており、短距離選手のように短時間で最大筋力を発揮する必要のある競技では、ウエイトトレーニングを励行し、ストレッチを行わないという選択が生まれる可能性があります。
常識を疑い、適切な処方を行う
ハムストリングの肉離れがストレッチ不足で起こるという科学的な根拠はまだありません。競技が異なるのに、ほとんどが同じストレッチを行っているのが現実で、ストレッチの有効性も否定されつつあります。
筋肉の柔らかさは、肉離れとどのような関連性があることは、まだわかっていません。今後は明らかになってくると考えますが、競技特性とアスリート個人の特性を考えて、カスタム化したトレーニング内容にするべきと思います。
参考:宮本 直和 コーチング・クリニック1月号 2020年